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「御苗場2018」を終えて

御苗場2018

展示を終えて感じたこと

横浜・大さん橋ホールでの、グループ展「御苗場2018」が終わって早2週間ちょっと。
展示終了後、バタバタが続いてしまったので、ようやくゆっくり振り返れた。

御苗場2018

今回の展示作品とブックは、ここ1、2年で撮影したスナップ写真を中心にモノクロで構成した写真群。

様々なものとの「出会い」の中で、自分の心に潜んでいる「なにか」が共鳴し引き出される。
心をクリアにしてシャッターを切れば、写真に撮影者の内面が投影される。
それがスナップ写真の面白さ。

どうもここ最近の僕の撮ったスナップを見ていると、ある種狂気のような爆発的な生命力に共鳴する部分と、存在が搔き消えるような滅びの中に美を感じ響き合う部分が多いことがわかった。

生と死。陽と陰。歓喜と悲哀。
心のバランスを保っている両極の感情。
相反するものによって世界はつくられているという神秘。

ブックでは、それらを満月が喰われていくさまを軸に構成した。

 

レビュアー賞については残念ながら今回はノミネートすらされなかったけれど、オーディエンスからの反応はこれまでで一番良かったように感じる。

コメント帳に残してくださった中から、いくつか素敵なご感想を紹介。

「黒鳥、月、水の流れ さまざまなものがひとつのものを示唆していてぐっときました」(T様)

「これはゾクゾクと何か伝わってくるものがあり また、集合体のパワーもあってかっこいいですね」(H様)

「写っているものはトゲトゲしいですがとても美しいと思いました これは、美ですね」(Y様)

「写真の質感、組み合わせステキです!ブラックスワンよい!音が聴こえそうです!」(S様)

「考えぬかれたシンプルな構図に荒々しいタッチ、ポートフォリオの写真の組合せも素晴らしいです。ひきこまれました」(K様)

「興味深く拝見しました。こちらの見る時の心によって、見え方、捉え方が変わってくるなと思いました。」(T様)

「展示とブックで作品に対する印象が変わるのが不思議な感覚でした。独特の世界観と内に秘めている感情がうまくリンクしていると思います。」(N様)

「山口さんの写真、いつも楽しみにしています 今回もとてもすてきです。写真集も良いですね。1枚1枚にも写真力があり、理想的です。昨日見た時と、今見た感じが違うのもおもしろいです。」(M様)

「これまで見せてもらったものとは全く違う…と思ったのですが、そうでもないかな…とも。根底にあるものは変わらず、見せ方、表現をこれまでと変化させることで幅と深さが出ていて、これからが楽しみです。また見させて下さいね。」(Y様)

「一瞬で目を奪われました。」(I様)

「今日見たなかで一番カッコ良かったです。全部スバラシイ!!」(S様)

「是非とも写真集として世に送り出してください。素晴らしい作品。」(I様)

(みなさま、本当にどうもありがとうございました。直接お会いして受け取ったお言葉、コメント帳に残してくださったお言葉、どちらも今後の制作の糧になり励みになります!)

あと、今回は名刺を取っていってくださる方がなんだかすごく多くて、あっという間になくなってしまった。
(いつかどこかでお会い出来るのを楽しみにしています!)

御苗場2018

御苗場2018

今回の展示会場と同時開催のイベントについて

今回は前々回と同じ横浜・大さん橋ホールでの開催。
大さん橋、屋上は相変わらず海風が強いけれど、解放的になれるとても気持ちのいい場所。
ホール内は天井が高く、北側のガラス張りの壁面から差す光が柔らかい。

御苗場と会場を共にした「Photobook JP」には尖った写真集がずらりと並び、石内都氏や鈴木理策氏などの貴重なトークがじっくり聴けて贅沢だった。

以下、Photobook JPのトークイベントを聞いたときの僕のメモ書きより一部抜粋。

「ニュートラル。頭で考えない。出会いを犠牲にしない。偶然。絵作りでなく出会い。力づくにしない。」
「世界の部分にたくさんの情報があることに気づく。」
(鈴木理策氏と秋山伸氏の対談より)

「本は残る。若い人にも伝えられる。未来がある。」
「ザラザラ欲。粒子と粒子の間に空気。銀塩写真は立体。」
(石内都氏と細倉真弓氏、飯沢耕太郎氏の対談より)

「写真の魔法。待つ、直感、運。1%以下に賭ける。」
「(人は見たいようにものを見ている。だから写真家は)新しいひねった見方を提示するのではなく、『ちゃんと正確に』見て示すこと。」
「カラー写真はレイヤーがひとつ加わる。感情が表現できる。なにより楽しい。」
(Emily Shur氏とJeremie Souteyrat氏、小林美香氏の対談、個人的な会話より)

また、twelvebooksのブースでは、濱中敦史氏の写真集の紹介・解説の仕方が実にいいなあと思った。
写真集に対する情熱と知識、そしてわかりやすい言葉による橋渡し。
写真集のソムリエのよう。
解説を聞いて面白いと思ったので、Katrin Koenning氏とSarker Protick氏の『ASTRES NOIRS』を購入した。

他のブースでは、Emily Shur氏の『SUPER EXTRA NATURAL!』と原美樹子氏の『These are Days』を購入。

 

あと、前回まで御苗場と会場を共にしていた「PHOTO!FUN!ZINE!」は今年は少し離れた象の鼻テラスで開催された。
出展者の方にお話をうかがったところ、今回はこの場所になってすごく良かったみたい。
CP+の登録手続きがなくても誰でも入れて見れるし、みなとみらいに観光で来たお客さんがふらりと立ち寄ってZINEを購入してくださることもあったみたい。

やっぱり新規のお客さんと繋がりたいのなら、オープンで入りやすい場所に展開して、気軽に構えず見られる環境をつくることが重要だなあと思った。

あと、これはあくまで一般的な話だけれど、「Photobook JP」が尖った魅力を放つ高価なブックが多いのに対し、「PHOTO!FUN!ZINE!」は万人が共感しやすいような内容でリーズナブルなブックが多かったので、そのあたりも客層との兼ね合いで良かったのではないかなと思う。

極端な話、尖ったものを熱狂的に求める人は、どんなに不便な場所にあっても少ない情報をかき集めてそこに行って、いくら払ってでも手に入れようとするだろうし、今日の1日に何か彩りを求める人は、自分の動線上にあって、共感できて自分の好みに合い、なおかつ財布に負担のかからない範囲で手に入れようとする。

どちらが良いとかではなく、それぞれに役割があって、それぞれ状況に応じて必要とされる。

象の鼻テラス

今後の予定

御苗場2018

今回展示した作品については、さらに磨きをかけてZINEとして発行しようと考えている。
うまくいけば、次の東京アートブックフェアで販売できる予定。

あと、新たなシリーズを徐々に撮りはじめていて、そちらが軌道に乗れば、おそらく全力を傾けることになると思うので、進展があればまたこのブログに綴ろうと思う。

(最後に、御苗場、お越しいただいたみなさま、気にかけてくださった方々、本当にどうもありがとうございました!今のところ次の展示は決まっていないけれど、またどこかでお会いできるのを楽しみにしています。)

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