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自分なりの場を

2018年には税込950円で買えた「写ルンです 27枚撮り」が、2022年9月現在1,760円になっている(ヨドバシカメラ比)。しかも品薄状態。元々フィルム関連は需要減少でじりじり値上げが続いていたが、ここにきて一段と値上げが際立つ。

物価高騰、コロナの長期化、ウクライナ侵攻、台湾をめぐる情勢緊迫化。終わりが見えずなんとも暗い気持ちになってしまうけど、社会情勢と自分の心をむざむざ同調させる必要なんてない。石田衣良さんのエッセイ『坂の下の湖』を読んでいてそう思った。2010年に書かれた文章だが、とても良いので引用してみる。

自分の幸せや気分を、この国や時代の在りかたから切断すること。ある社会に属し、メンバーとしての責務を果たしながら、自由に自分の人生を企画すること。公と私のバランスを再調整して、私を強くしていくしかない。それこそがつぎの日本人の幸せの形だ。その場合追っかける目標は、もうばらばらでいい。従来のように一流大学から大企業にはいり生涯賃金三億円超のホワイトカラーとして働くなんて決まった形は少数派になるのだ。「みんなでいっしょに」は完全になくなった。この新しい生きかたを自由でおもしろいと思うか、不安で怖いと思うかで、これからの人生の色あいは決まってくる。ぼくはこんなにおもしろい時代はないと思うよ。みんな、自分の場所をつくって、勝手にたのしみながら自分の仕事と遊びを始めよう。

石田衣良『坂の下の湖』2014年 キーワードは「切断」より

感受性の強い人は、社会の不安な波に同調してうつむいてしまうかもしれないけど、なんとか切り離して、自分の場所をせっせとつくって勝手に楽しみながら生きていけばいいと思う。どうせこれからも想定外の大変なことはたくさん起きるのだろうから。

僕も自分なりの表現の場を築いていって、自分の身体を通して出てくるものを勝手に楽しんでいこう。それがたまたまどこかの誰かに届いて、その人の何かを変えたのなら、作り手としてこれほど嬉しいことはないと思う。

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