「ジュリア・マーガレット・キャメロン展(2016年7月2日〜9月19日)」を観に、三菱一号館美術館に行ってきました。
48歳で目覚めた才能
キャメロンは、1815年にインドで生まれた上層中流階級のイギリス人で、48歳でカメラをプレゼントされ、そこから才能に目覚めて、人脈や環境を最大限に活用しながら情熱的に作品を生み出して、遂には写真史に名を残した女性写真家です。
彼女のすごいところは、まだカメラが発展途上の時代に正統な写真技術から離れて、独自のスタイルを追求し、写真をアートとして売り込もうとしたところ。
彼女のモチベーションの高さは手紙からも読み取れます。
私の夢は、詩や美しいものに精一杯身を捧げ真実をまったく犠牲にすることなく理想と現実を組み合わせることで写真の品位を高め、写真にハイアートの特徴と有用性をもたらすことです。
キャメロンからヘンリー・コウルへの手紙(「ジュリア・マーガレット・キャメロン展」 キャプションより)
理想と現実を組み合わせた絵画的な写真
キャメロンの作品の特徴といえば、大胆にクローズアップされた肖像、宗教や古典から着想を得た演出、ソフトフォーカス、劇的な光の作り込み、ネガの傷などの制作段階のハプニング的要素の活用などがあります。
これらははっきり言って、当時の“写真はこうあるべきだ”という像からはかけ離れていました。
現に、彼女の作品を見た当時の批評家は「写真の長所がすべて軽視されている」と言っています。
しかし、彼女には明確な意図があり、そして批判されても貫き通す継続力がありました。
例えばキャメロンは、自身のソフトフォーカスのアプローチについてこう言っています。
「私は自分の視覚にとても美しく映るところまで焦点を合わせていき、そこで手を止めたのです。それ以上レンズを絞って、他のすべての写真家が強く求めるような明確な焦点にはしませんでした。」
(「ジュリア・マーガレット・キャメロン展」 キャプションより)
表情と光の魔法、ベアトリーチェ
今回の展示作品の中で僕が一番ビビっときたのは、こちらの「ベアトリーチェ 」(撮影OKのゾーンにありました)。
いかがでしょう。
女性の内面に宿る繊細な感情がなんとも言えない表情となって外側ににじみ出し、美しい光を受けていっそう甘美に輝いています。
表情と光の魔法を巧みに操るキャメロンの境地を追体験したような気がして震えました。
ぜひ本物を観てみてください。
そして進化論で有名なチャールズ・ダーウィンのポートレートがありました。
神秘的で威厳に満ちていてかっこよかったー。
展示の流れもキャプションもわかりやすく、どっぷりキャメロンの世界に入れました。
いやー、素晴らしい展示でした。